2011年3月7日月曜日

東京・向島「鳩の街通り商店街」の風景

(エッセイ)

自転車で、浅草のあたりまで来ると、東京スカイツリーがよく見える。
足元にはビルが立ち並び、自転車の往来も激しい明治通りだが、上を見上げると、スカイツリーがシンボルマークとして立っている。


東京の風景も、吉原大通りを越えると少し変わる。
チェーン店も減り、昔ながらの昭和の風景を、そこに見出すことができる。

大きなお寺、歴史のある天麩羅屋さん、個人商店の雑貨屋さん。

同じく東京、しかし住宅地に生まれ育った私は、これが下町だ、と実感する。


「曳舟」駅から徒歩10分程度のところにある、「鳩の街通り」商店街は、向島にある小さな商店街だ。

商店街といっても、そこはまさにパリのパサージュのように入ると小さな小宇宙になっている。
焼き鳥屋から始まり、理容院、スーパー、駄菓子屋など、全ての物がここで揃ってしまいそうだ。

普通の商店街と比べて、少し道幅の狭い、自動車一つ通るにも苦労しそうな、小さな商店街だ。
だから、歩いていると、ふと座って人の往来を眺めたくなる。
商店街の中から顔を覗かせる太陽は、さも熱帯魚を眺める飼い主のように、私たちを見つめている。
この商店街に生きる人たちは、商店街の外側から覗かれ、また内側からも飼い主を見ているのだ。

だから、私にはこの商店街はパリの左岸近くのパサージュのように思えてならないのだ。
単に東京の一画にささやかな商店街があるのではなく、独特の世界を構築しているミニチュアの模型が、東京に突如現れたような印象を与えるのである。

「鳩の街商店街」は、そんな素敵な、歩いていて楽しい商店街である。


そこにある「こすみ図書」というオープンスペースで、昨日上映会を行った。

作品は寺山修司「田園に死す」

集まった人たちでたこ焼きを作って、焼きうどんを振舞ってもらって、ビールを片手に映画を見る。
こすみ図書は長屋のような作りで、僕は昭和の長屋に住む大家族の一員になったような気がした。

今でも、落語家なんかはそうだけれど、血縁関係はなくとも、同じ釜の飯を食う間柄。
そんな、大部屋俳優のような生活に、僕は憧れていていたのだった。

知っている人も、知らない人も、一緒にご飯を作って食べる。
それって、とっても幸せなことだ。